遠山サキさんに教わるアイヌ伝承の糸つくり

草から糸をつくる

遠山サキさんはアイヌに生まれました。
アイヌに伝わる暮らしや知恵、歌や踊りを次世代に繋ぐために、自ら学び、実践されてきた83歳のアイヌフチ(フチとはおばあちゃんのこと)です。
サキさんから糸づくりを習いました。

アイヌの伝統では、イラクサという草から糸をつくります。
草といっても、野原に生えるやわらかな草ではなく、山に生えるごつごつした草です。イラクサの茎を天日にさらし乾燥させると、枝のように茶色くなります。その表皮の繊維を剥ぎ、撚りを入れて、糸にしてゆきます。糸というより、細ひもという感じです。
サキさんは、左手の親指と人差し指と中指をつかって、二股に分かれた2本の糸、それぞれに撚りを入れ、さらに、その2本を1本にまとめながらそこにも撚りを入れます。その見事な指さばき!アイヌ語ではこの糸作りのことをカイカといいます。カイカができるようになれば一人前だそうです。
そして、この紐のような糸で、籠を編んだりするそうです。

アイヌの人たちは、自然を敬い、自然とともに何千年も生きてきた民族です。
自然を壊すことなく何千年も生き抜いてきた古代の精神性(スピリット)を、サキさんの指先を通して、現代の私たちが受け取れるということは、奇跡以外のなにものでもないと、心から思うのです。

photo : Vin Oota